【未開の地】行きやすい中央アジア・スタン3カ国
2025年03月14日 category:特集一覧精神的にも物理的にも距離を感じる中央アジアは、海外旅行の渡航先として。日本人にとってまだまだ未開拓の地です。スタンがつく国は6カ国。物騒なイメージがありますが、ウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタンの3カ国は、比較的治安も良く、観光地として最近注目を集めています。シルクロードの中枢に位置し、歴史的にも文化的にも見どころの多い地域です。今回は、訪れてみたいスタン3カ国をご紹介します。
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◆スタンがつく国
「○○スタン」のスタンは、ペルシャ語で「土地」「国」「~が多い場所」を意味します。例えば、カザフスタンであれば「カザフ人の国」という意味があります。
スタンがつく国は、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンの6カ国です。
この内、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンの3カ国は、外務省によって渡航勧告が出ています。今回ご紹介する記事は、治安の良いウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタンを取り上げます。
- ◆治安が悪いスタン3カ国(今回は取り上げません)
タジキスタン レベル3渡航中止勧告
過去の内戦の影響や貧富の格差が大きい都市部では、強盗や窃盗などの軽犯罪が増加傾向にあり治安は悪い。アフガニスタン レベル4退避勧告
タリバンによる支配が継続しており、治安は極めて不安定かつ危険です。 - パキスタン レベル4退避勧告
- アフガニスタン側、パキスタン側双方の過激派組織が拠点を置き、越境テロを行っています。
◆治安の良いスタン3カ国。どんなところ?
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- ウズベキスタン
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ウズベキスタンは中央アジアの国で、旧ソ連の構成国でした。首都はタシケント。シルダリヤ川の支流であるチルチク川の流域に位置する歴史的なオアシス都市であり、人口は、中央アジア最大となっています。
- 言語:国語はウズベク語、ロシア語(公用語)、タジク語など他多数の言語がある。
時差:マイナス4時間 - ウズベキスタンは、古代からシルクロードの中継地として栄え、14世紀に興り西アジアに至る大帝国を築いたティムール王朝の末裔の国です。モスクや霊廟、中国と地中海地域を結んだ古代の交易路シルクロードに関連する史跡で知られ、かつての往来の栄華が今も色濃く残ります。世界中から観光客が訪れ、中央アジアの中でも最も旅行人気の高い国です。
◆主な見どころ
青の都 サマルカンド
ローマやアテネ、バビロニアとともに世界の古代都市のひとつとして、2500年の歴史を誇るサマルカンドには、いくつもの呼び名があり、「青の都」、「東洋のローマ」、「イスラムの真珠」などと呼ばれています。煌めくような青のモザイクタイルで彩られた建物は美しくエキゾチック。青の都市を形成するタイルは、中国の陶磁器とペルシャの顔料がここで融合し生まれました。青い空に映える美しいモスクが象徴するように、常にシルクロードの中心都市として栄えてきました。
レギスタン広場
画像:iStock
レギスタン広場は、ウズベキスタンのシンボルでもあり、6つの街道が交わるシルクロードの交差点です。かつて栄華を極めた時代には、この広場周囲に商店や職人の店が立ち並び、農産物や手工芸品が売られ、各方面に行き交う人々で活気に満ちていた所です。また、広場は命令を市民に伝える場であり、祝賀行事や軍隊の集結、さらには公開処刑が行われる場所でもあり、光と影その両方あって、この都市の繁栄は極まっていったことが想像できます。広場を囲む三方に美しいマドサラ(イスラムの教育機関の建物)が配置され、圧倒されるような壮麗さを誇っています。
- ウズベキスタン
古都 ブハラ
世界遺産の古都
中心部にある旧市街は、1993年に「ブハラ歴史地区」として世界文化遺産に登録されています。旧市街地はシルクロードの交易地として、そしてイスラムの文化的中心地としても繁栄しました。13世紀に、チンギス・ハーンによって街は破壊されてしまいますが、16世紀にブハラ・ハーン国の首都として再び復興し、商店街やモスク、メドレセが造られました。時代が変わった今も、エキゾチックな歴史遺産の残る街は、多くの観光客で賑わいを見せています。「タキ」と呼ばれるドーム付きのバザールがあり、ウズベキスタンの伝統刺繍スザニや民芸品なども売れられています。
カラーン・ミナレットとカラーン・モスク
帽子をのせたようなカラーン・ミナレットは、礼拝を呼びかける塔で、その高さは45.6m。シンプルだがすらっと空に突き抜け、今では街のシンボルの役割も果たしています。塔の側面には、イスラム圏独特の美しい紋様があしらわれていますが、その美しさとは対照的に、19世紀後半までは、罪人を生きたまま袋に入れて投げ落とす刑が行われていたため、別名「死の塔」とも呼ばれています。「カラーン」とは、大きいという意味がある通り、隣接するモスクの収容人数は、1万人と言いますから、その規模の大きさがわかります。1220年のモンゴル帝国のブハラ占領の際にモスクの方は、破壊されていますが、ミナレットはあまりの美しさに感激したチンギス・ハーンが、塔の破壊を止めるように命令したという伝承が残っていいます。

画像:iStock
タキザルガロン

画像:iStock
シルクロードの交易地と栄えたブラハの見どころ、お買い物どころは「タキ」と呼ばれるバザールです。「タキ」は、丸い屋根が連なっているのが特徴で、バザールでは、特産品の絨毯や皿、陶器、帽子など、ありとあらゆる工芸品や雑貨が揃っています。ブラハには3つの「タキ」があり、その中でも規模が大きいのが、タキザルガロンです。

画像:iStock
中でも注目は、スザニと呼ばれる美しい刺繍の布。元は、遊牧民の女性たちが代々受け継いできた伝統工芸のひとつ。壁にかけたり、ベッドカバーやクッションとして売られています。花、果物、鳥、幾何学模様などモチーフは、地域や家によって特徴があり、そもそも花嫁道具だったこともあって、祝福の意味が込められた美しい手仕事です。
また、ものづくりの街としても知られるブラハの特産品の一つにコウノトリのハサミがあります。コウノトリはブハラのシンボルで豊作や幸せへの願いが込められています。一つ一つ職人の手作りによって作られていて、小さくても切れ味抜群の万能鋏です。女性へのお土産には困ることはなさそうです。
カザフスタン
中央アジアに位置する共和制国家。西と北でロシア連邦、東で中華人民共和国(中国)、南でキルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンと国境を接しています。南西は世界最大の湖カスピ海に面しており、国土面積は、日本の約7倍とかなり大きな国土を有しています。首都はアスタナ。1997年に国内最大の都市アルマトイから遷都しました。
言語:カザフ語が国語。(ロシア語は公用語)
時差:マイナス3時間
カザフスタンは世界で9番目に大きな領土を持つ国で、中央アジアで最大の内陸国です。旅の拠点となるのは、かつての首都でありカザフスタン最大の都市アルマトイ、現在の首都となるアスタナになります。アスタナは、アルマトイに次ぐ近代的な大都市です。1998年のカザフスタン政府主催の国際コンペで1位に選ばれた日本の建築家・黒川紀章の都市計画案に基づき開発が続けられています。
アルマトイは、中央アジアのシルクロードの重要な部分を成していました。カザフスタンの経済・教育・文化・商業の中心地でありながら、南に天山山脈を望む風光明媚な街として知られています。現代と歴史が融合した建築様式や、美しく雄大な自然の両方を楽しむことができるため、世界中の旅行者を魅了しています。
◆主な見どころ
アルマトイ
アルマトイはカザフ語で「リンゴの里」という意味で、アレクサンダー大王によって初めてりんごが発見され、それがギリシャに持ち帰られたことから、アルマトイは「りんごの街」としても有名です。
ゼンコフ教会
ゼンコフ教会はアルマトイ中心のパンフィロフ戦士公園の中にあるロシア正教会の教会です。釘を1本も使わない木造の建物ですが、耐震の技術が取り入れられたため、1911年にアルマティで起こった大地震で倒れなかったことで世界的に有名になりました。教会の建物としては、世界で2番目の高さを誇り、世界唯一の木造のロシア正教の聖堂として知られています。カラフルなドーム、黄色の建物は美しく目を惹き、お伽話の中の建物のようです。

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様々な表情を見せる手付かずの大自然
アルマトイからは、登山やハイキングのトレイル、オフショなるツアーが豊富にあります。スイスのアルプスのような景色、まるでグランドキャニオンのような巨大な渓谷、トルコのカッパドキアのような地形、他にも歌う砂丘、エメラルドグリーンに輝く湖など様々に、全く違った表情の自然の景色を味わうことができ、雄大な自然が誘う玄関口となっています。
アルティン・エメル国立公園は、カザフスタン最大の自然保護区でありその広さは、京都府とほぼ同じ約46万ヘクタール。イリ川と複数の山脈で構成された未開の地に手付かずの自然が残っています。アルティン・エメル国立公園には、絶滅危惧種と指定されている数多くの動物、植物たちが生息しています。この地域の動植物、古生物学および自然遺跡、文化的および歴史的なランドマークを保護することを目的として設立されました。
「歌う砂丘」と呼ばれるシンキングデューン

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歌う砂丘は長さ約3km、高さ約150m。適切な条件が満たされると、砂丘は振動して歌い始めるとか。カザフスタンの神秘のひとつに数えられています。
アクタウ山脈

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かつてイリ盆地を満たしていた古代の海の底だったというアクタウ山脈は、水が徐々に蒸発するにつれて、さまざまな種類の岩石の層で構成され、高さ1000mの地層は、色鮮やかな地層が重なっています。
コルサイ湖

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コルサイ湖は、標高2000mの森に囲まれたエメラルドグリーンの湖で、「北天山の青いネックレス」とか「天山山脈の真珠」と称えられるほど美しい絶景の地です。湖面が静かに澄んでいるときには空を反射し、目に鮮やかなグリーンとブルーのシンメトリーの世界を造りだします。エメラルドグリーンの湖と自然の中をトレッキングしたり、乗馬で湖の周りを散策できるツアーがあります。
チャリンキャニオン

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天山山脈から流れる雪解け水と風雨の侵食により造られたチャリンキャニオンは、カザフスタンのグランドキャニオンと呼ばれ、アルマトイからは車で3時間程の距離にあります。
トルクメニスタン
トルクメニスタンは、アフガニスタン、イラン、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタンと国境を接する中央アジア南西部の共和制国家の永世中立国です。豊富な石油や天然ガスの資源国となっており、経済が豊かで政府による治安維持が行き届いています。カラクム砂漠が国土の85%を占めており、国民のほとんどは南部の山沿いの都市に住んでいます。首都はアシガバートで、侵略や地震によって何度も崩壊し、復興してきた歴史背景もあり、古い建物はほとんど残っていませんが、「世界一大理石の建物が多い街」としてギネスブックに登録されています。
※注意事項
・トルクメニスタンへの入国には、国籍を問わずビザが必要です。
・トランジットビザで通過する場合を除き、トルクメニスタンでの個人旅行は許可されていません。免許を持ったガイドの同行が必要となります。
・アシガバートでは写真撮影に関する厳しい規制があります。撮影の際は注意が必要です。
・一党独裁制で、事実上独裁政権です。観光客の安全は確保されていますが、敏感な話題には触れないようにしましょう。
言語:公用語はトルクメン語、ロシア語も広く通用している
時差:マイナス4時間
国土の85%が砂漠地帯であるトルクメニスタンは、壮大な景観や遺跡に知られた見所が点在しており、「ニサのパルティア時代の城塞群」「クフナ・ウルゲンチ」「国立歴史文化公園「古代メルブ」と3つの世界遺産があります。昨今、世界中の旅行者から注目を集めているのは、「地獄の門」。トルクメニスタンを訪れる旅行者のほとんどが「地獄の門」への訪問を目的としていると言われるほどです。
◆主な見どころ
地獄の門
画像出典:トルクメニスタン政府観光局
地獄の門は、1971年旧ソ連時代に天然ガスの発掘調査中に何ならかの事故が起き、地面に大きなクレーターが開いてしまいました。噴出する有毒ガスの放出を食い止めるために点火しましたところ、可燃性ガスが地下から絶え間なく吹き出るため、延々と燃え続けており、現時点ではこの天然ガスの燃焼を食い止めることは技術的にとても困難と判断されています。穴の直径は90m。消えぬまま燃え盛る炎は、まさしく地獄の窯の形相をしています。特に夜、闇の中で真っ赤に燃える地獄の門は、この世のものとは思えない位ほど印象的な光景となっています。
個人ではアクセスが困難な砂漠の中にあるため、訪れるにはツアーに参加するのが一般的です。当然周囲にホテルなど宿泊施設はありませんので、地獄の門の近くでキャンプし、テント泊となります。
アシガバート
1991年、ソビエト連邦の解体に伴いトルクメニスタンが独立を果たすと、アシガバートはその首都となりました。独立後、アシガバートは急速な近代化を遂げています。特徴的な白い大理石の建築物が立ち並び、統制された独特な景観は「白い街」として、訪れる人にユニークな印象を与えます。ガス資源の豊富なトルクメニスタンは莫大な資金を費やして奇妙な建築物を次々と建設しており、「世界一大理石の建物が多い街」の他にも「世界一大きい室内観覧車」「世界最大の星形建造物」「世界最長のカーペット」などのギネス記録を持っています。
世界一大きい室内観覧車「宇宙(Alem)」

画像:iStock
高さ47.6メートル、6人乗りのゴンドラが24個、鉄骨とガラス製の巨大な八角星形のケースで覆われた室内観覧車。室内!?と驚いてしまいます。ここから白い街を一望してみるのも面白いかもしれません。
アシガバートのメインとなるランドマークは、トルクメニスタンの永世中立国としての地位を象徴する「中立の塔」、白大理石づくりの建物が立ち並ぶ「独立公園」、「トルクメンバシ・ルヒ・モスク」などがあります。
メルブ遺跡

画像:iStock
メルブ遺跡は、砂漠のなかにある中央アジア最大の遺跡です。紀元前6世紀頃、シルクロード中継点、オアシス都市として栄華を極め、人口は100万人に達したといわれています。宗教的にも仏教、のちにイスラム教の拠点としても繁栄しました。1219年のモンゴルによる侵攻によって、一世紀以上にわたってメルブや他の都市にも没落をもたらしたとされています。現在は「国立歴史文化公園・古代メルブ」としてトルクメニスタン初の世界遺産に登録されており、トルクメニスタンでは欠かすことのできないランドマークとなっています。
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日本人観光客未開の地と言われる中央アジアのスタン3カ国を駆け足で、ざっくり紹介いたしました。スタンがつく国が多く、これまで危険なイメージから渡航先の候補にも上がることはなかったのではないでしょうか。中央アジアは混沌としており、情報も少ないため、曖昧イメージになりがちですが、全てが物騒なわけではなく、見る価値のあるランドマーク、触れてみたい文化も多くあります。今回取り上げた3カ国の中では、特にウズベキスタンは、都市部は魅力が凝縮されているので、パッケージ商品も多く出ており、女性一人旅でも行きやすい国となっています。これまでのイメージを払拭して、興味を持っていただけましたら幸いです。いずれもイスラム圏ですので肌の露出を避け、スカーフの着用や宗教的施設でのマナーなど、事前に情報収集してくださいね。
※海外安全ホームページをご確認ください。
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