『冬のサマーハウス(その2)』ドロッペさんのハーデソーブラー
2016年02月15日 category:北欧コラム
こんにちは。ティンドラ・ドロッペです。前回に引き続き、サマーハウスのお話(その2)後半です。電気・水道・ガスを引いていない所で、真冬の休暇!?ここにこそ、北欧マインドがつまっているんです。
前回のお話
『冬のサマーハウス(その1)』はこちら
サマーハウス滞在2日目、気温マイナス5度、晴れ。
のんびりした朝ごはんを食べ終わる頃には、太陽も低い空にやわらかい光となって、雲の向こうに存在を感じます。
「森の散歩にでかけましょう!素晴らしい景色を見せたいの。」
素敵な提案にうなづかない理由などありません。しっかり着込んで雪山歩きに出かけました。
まっ白に染まる森でも、5km歩けば体は熱くなります。生まれたての風が樹々を揺らし、ひんやりと頬をなでていきます。
空気はきらめき、爽やかな針葉樹の香りに、思わず何度も深呼吸。とても気持ちのよいヒーリング散歩です。
雪のキャンパスには、動物達の足跡。シカ、ウサギ、小鳥たち、そしてゾウが歩いたかのような足跡を残したのはシカ科最大種、ムース(ヘラジカ)のものです。私達人間が3人歩いた後は道になっていきます。
森を抜け、うっすらと氷の張る湖を通って到着した高台の物見やぐらに登ると、そこには見渡す限り、濃い緑色の景色が広がっていました。
さえぎるものは何一つありません。針葉樹の森は、まるで深緑のカーペットのように大地を包み、天と地を分ける線を360度描いています。
「見て!これがスカンジナビアの大地よ!これを見せたかったの。スカンジナビアへようこそ。」そう言って、カーンが私の顔を覗き込みます。
広大な大自然の中で、私の存在は針で突いた点ほどもない・・・日々積もった疲労も苦悩もすべて吸い取られていきます。「ちっぽけ、ちっぽけ」心の中でそう繰り返すうちに、なんでもないことのように心が晴れていくのです。
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360度ぐるっとこの景色 | うっすらと湖も凍った |
3日目は、6km離れたお隣、ヨンナおばさんが遊びにきました。午後からはロバートに勧められて、クロスカントリースキーを初体験。ロバートが屋根裏から出してきたスキー板は、スキーをしたことがない私が見ても、“スキー博物館”とかあったとしたら、そこに展示されていてもおかしくないくらいクラッシックなものでした。
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6km先のお隣、ヨンナおばさんのソリ。 |
年代モノのスキー板。 |
「じゃあ、ちょっとそこまで行ってみよう!」と、簡単に言われたものの、途中で何度もスキー板の留め金がはずれ「待ってー!」「ゴールはどこ~?」。ロバートについて行くことに必死です。ロバートの「ちょっとそこまで」は、なんと往復6km!慎重に足元ばかり見て2時間。なんとかころばずにサマーハウスに戻ってきた頃は、すっかり日が落ちていました。
「顔をあげてみて!これがホーム・スイート・ホームだよ。」。闇に包まれかけている森の中に、キャンドルが灯る窓が見えました。なんと暖かい光なんでしょう。私達の帰りを待って、カーンが灯してくれていたキャンドルの明かり。そしてチムニーからは、もくもくと煙が。あの窓の向こうで、カーンが温かい料理を作ってくれているんだ!疲れも不安も一瞬にして消えてしまうのでした。
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cozyなダイニング | キャンドルは各窓辺に |
サマーハウスには、電気もガスも水道もありません。
引こうと思えば、いつでも引けるのです。ただ、彼らはあえて引いていないのです。
サマーハウスにある道具達は、コレクションというものではなく、味のある古い物ばかりです。いつからかそこにあるといった佇まいで、飾られているわけではなく、すべてが現役で使われています。手入れをして長く愛着を持って、家族に引き継がれてきたものです。
サマーハウスで過ごす時間は、百年前の暮らしと大きく変わりはありません。でも、原始的な暮らしに戻るわけではなく、人間が持っている本来の能力を発揮するだけです。陽の光に合わせて営み、娯楽のない夜は語らい絆を深めます。男はたくましく頼りがいがあり、女は優しくあたたかい。そしてささいな自然の変化にお互いに心をふるわせて、知恵を絞るのです。
「せっかくの休暇なのに、日常と同じことをしてもつまらないじゃない?」カーンもロバートもそう言います。一見すると不便にも思えることも楽しんでしまう、そうしている内に日常の煩わしさやストレスから解放されるのです。
ロバートが教えてくれた「時をすごす家(フリッチスフース)」。その意味がぴったりと、手に取るように理解できました。
<休暇>という概念が日本とは、根本的に違うけれど、“時をすごす家”、素敵な考え方です。彼らに限らず、北欧の人たちは“時間の質”に対する意識が非常に高く、心の豊かさとくつろぎを見出すことに長けています。世の中が便利になればなるほど、失っていくものも多いとよく知っていて、ひとりの人間の持つ弱さや痛みも知っているように思います。贅沢したり、楽をする休暇ではありませんが、人としての本質を見失わないため、明日からの活力のために必要な時間を過ごしているのです。
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小鳥に餌を置いていくカーン | このコーナーのタイトル画 帰路スコーネ地方の景色 |
滞在4日目。気温マイナス9.5度、晴れ。
冬のサマーハウスに滞在することで癒され、リセットできたことは間違いなく、明日からの私に不要なモノは、ここに全部おいて行くことができました。満点の星空から、針葉樹の森からは、沢山のおみやげをもらって、コペンハーゲンへの帰路に着きます。
赤い家を出る時、カーンが小鳥たちに、餌をたっぷりと置いていきました。「ちゃんと冬を越すのよ~。」小鳥たちのさえずる声にも、たくさん癒されましたものね。
この場をお借りして、あらためてカーンとロバートに感謝を。
おまけ。
ベストシーズンのサマーハウス
投稿『冬のサマーハウス(その2)』ドロッペさんのハーデソーブラーは三井住友海上海外旅行保険 の最初に登場しました。
『冬のサマーハウス(その1)』ドロッペさんのハーデソーブラー
2016年01月14日 category:北欧コラム
こんにちは。ティンドラ・ドロッペです。今回はサマーハウスのお話です。雪深い冬にサマーハウスで過ごした数日間を2回に渡ってお伝えします。
サマーハウスを所有している北欧の人たちは少なくありません。私のデンマークの友人、カーンとロバートもスウェーデンにサマーハウスを持っています。一般的には夏の休暇で使うことが多いのですが、週末、気分転換しにサマーハウスに訪れることもあります。日本に於ける別荘を持つステータス感覚とはちょっと違います。避暑が目的でサマーハウスと呼んでいるわけではなく、私の友人によるとぴったりの英語がないからとのこと。彼らは自分達のサマーハウスのことを『FRITIOS HUS(フリッチスフース)』=“時を過ごす家”と呼んでいます。
電気も水道もガスもないと聞いていたので、北欧の真冬に大丈夫なのか?どうやって過ごすのか?半信半疑でした。
コペンハーゲンを早朝発ち、延々と続く針葉樹の中をドライブして7時間。うとうといねむりしていると「着いたわよ!ここよ。」とカーンの弾んだ声で目を覚ましました。
そこに姿を現したのは、たっぷりと雪をまとった針葉樹の濃い緑とこの土地特有の赤い家。
これがFRITIOS HUS=フリッチスフースです。
「わぁ~!!」と、素敵すぎて言葉がでてきません。深い森に迷い込んだおとぎ話の主人公になったような気持ちです。
車からゆっくり足を降ろし、新雪の中に足を踏み入れます。「ムギュ、ムギュ」九州生まれの私は、ふくらはぎ辺りまで積もったパウダースノーの感触も初めてです。こんな真冬でも小鳥はさえずり、澄んだ声が空に響きます。
新しい体験を楽しむ私をよそに、カーンもロバートも急いで車から荷物を降ろし、ひと息つくこともなく働き始めました。長時間ドライブだったのに?お昼ごはんも食べなかったのに?コーヒーも飲まないの?心の中でそう思った瞬間、「早くしないと日が暮れてしまうのよ!!」そう言われて、はっとするのでした。
私たちが到着した頃にはもううっすらと暗く、夜が近づいてきていました。暗くなってしまう前にここで過ごす準備を終わらせなければなりません。
ロバートはすぐに蒔き割りを。カーンはキャンドルに明かりを灯し、各部屋へ。
そうか、火がなければ始まらない。私も日常からモードを切り替えないと!
「何したらいい?手伝う!」
「裏の井戸で水を汲んできて!」
「OK!」
OK!と言ったけど、井戸で水汲みなどしたことない、大丈夫かな?いやいやそんな甘えたことを言っていては、凍え死んでしまう!
つるべ式の垂直井戸。ウールの手袋の繊維がチェーンに凍り付いて、うまく引っ張れず何度も水をかぶってしまいました。
この土地の水は鉄分が多く、紅茶のような色をしています。飲料水はデンマークから持参し、井戸水は洗面や食器洗いに使います。
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夏に集めた薪 | 急いで薪割りをするロバート |
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一番に灯したキャンドル | キッチンのオーブンにも火を入れます |
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スウェーデン式タイルヒーター 150~200年前のもの |
お手製水用タンク |
暖まるまでには時間がかかりますが、ストーブに火が入りようやく人心地つくことができました。
このスウェーデン式のタイルヒーターは少ない燃料で、長時間一定温度の熱を放射するストーブです。縦型のオンドルとでも言いましょうか。
床から天井までずどーんと長い円柱形はスウェーデン独特のものだそう。150年~200年前のもので、現在でもメンテナンスをしてくれる会社もあります。表面のタイルは、長くは触れられないけど、外から帰ると寄りかかることができるくらいの温度です。
この日のランチ兼夕食は、生ハム、白カビチーズ、インゲン豆のペースト、スモークサーモン、ビーツです。
全部冷たいものばかり!?とお気づきの方もいらっしゃるでしょうか?
今日に限らず、そもそも北欧諸国の伝統的な食べ物は冷たいものがほとんどです。
今では豊かな国々ですが、昔は貧しく、薪は貴重なエネルギー資源でした。日本人の感覚だと、寒い日は鍋料理で温まったり、熱いお風呂に入って心身ともに安らぎを感じますね。しかし、寒くて暗い冬が長く続く北欧では、その昔、部屋を暖めるのがやっとだったのです。温かい料理やバスタブで体を温めることはできません。夏の間は、保存食をつくり長い冬に備えます。酢漬け、塩漬け、燻製などが伝統料理となっていくわけです。
フリッチスフースでの一食目を食べ、北欧の伝統食は冷たいものが多いということが腑に落ちるのでした。
ちなみに「明日は、温かいものを食べましょう!」と言って、2日目の夜はラムを薪のオーブンでローストしたものをいただきました。
あっという間に日は落ち、フリッチスフースはすっかり闇に包まれました。
娯楽のない夜は大いに語らい、私たちはよりお互いを知り、理解しあうことができました。昔の家族団らんもきっとこんな感じで、信頼関係や絆を強くしていったことでしょう。こうして、長く暗く寒い冬をみんなで協力して乗り越えてきたということが、現在の福祉大国形成の礎になったと、身を持って感じる滞在となりました。
次号「冬のサマーハウスその2」につづく
『冬のサマーハウス(その1)』ドロッペさんのハーデソーブラー
2016年01月14日 category:北欧コラム
こんにちは。ティンドラ・ドロッペです。今回はサマーハウスのお話です。雪深い冬にサマーハウスで過ごした数日間を2回に渡ってお伝えします。
サマーハウスを所有している北欧の人たちは少なくありません。私のデンマークの友人、カーンとロバートもスウェーデンにサマーハウスを持っています。一般的には夏の休暇で使うことが多いのですが、週末、気分転換しにサマーハウスに訪れることもあります。日本に於ける別荘を持つステータス感覚とはちょっと違います。避暑が目的でサマーハウスと呼んでいるわけではなく、私の友人によるとぴったりの英語がないからとのこと。彼らは自分達のサマーハウスのことを『FRITIOS HUS(フリッチスフース)』=“時を過ごす家”と呼んでいます。
電気も水道もガスもないと聞いていたので、北欧の真冬に大丈夫なのか?どうやって過ごすのか?半信半疑でした。
コペンハーゲンを早朝発ち、延々と続く針葉樹の中をドライブして7時間。うとうといねむりしていると「着いたわよ!ここよ。」とカーンの弾んだ声で目を覚ましました。
そこに姿を現したのは、たっぷりと雪をまとった針葉樹の濃い緑とこの土地特有の赤い家。
これがFRITIOS HUS=フリッチスフースです。
「わぁ~!!」と、素敵すぎて言葉がでてきません。深い森に迷い込んだおとぎ話の主人公になったような気持ちです。
車からゆっくり足を降ろし、新雪の中に足を踏み入れます。「ムギュ、ムギュ」九州生まれの私は、ふくらはぎ辺りまで積もったパウダースノーの感触も初めてです。こんな真冬でも小鳥はさえずり、澄んだ声が空に響きます。
新しい体験を楽しむ私をよそに、カーンもロバートも急いで車から荷物を降ろし、ひと息つくこともなく働き始めました。長時間ドライブだったのに?お昼ごはんも食べなかったのに?コーヒーも飲まないの?心の中でそう思った瞬間、「早くしないと日が暮れてしまうのよ!!」そう言われて、はっとするのでした。
私たちが到着した頃にはもううっすらと暗く、夜が近づいてきていました。暗くなってしまう前にここで過ごす準備を終わらせなければなりません。
ロバートはすぐに蒔き割りを。カーンはキャンドルに明かりを灯し、各部屋へ。
そうか、火がなければ始まらない。私も日常からモードを切り替えないと!
「何したらいい?手伝う!」
「裏の井戸で水を汲んできて!」
「OK!」
OK!と言ったけど、井戸で水汲みなどしたことない、大丈夫かな?いやいやそんな甘えたことを言っていては、凍え死んでしまう!
つるべ式の垂直井戸。ウールの手袋の繊維がチェーンに凍り付いて、うまく引っ張れず何度も水をかぶってしまいました。
この土地の水は鉄分が多く、紅茶のような色をしています。飲料水はデンマークから持参し、井戸水は洗面や食器洗いに使います。
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夏に集めた薪 | 急いで薪割りをするロバート |
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一番に灯したキャンドル | キッチンのオーブンにも火を入れます |
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スウェーデン式タイルヒーター 150~200年前のもの |
お手製水用タンク |
暖まるまでには時間がかかりますが、ストーブに火が入りようやく人心地つくことができました。
このスウェーデン式のタイルヒーターは少ない燃料で、長時間一定温度の熱を放射するストーブです。縦型のオンドルとでも言いましょうか。
床から天井までずどーんと長い円柱形はスウェーデン独特のものだそう。150年~200年前のもので、現在でもメンテナンスをしてくれる会社もあります。表面のタイルは、長くは触れられないけど、外から帰ると寄りかかることができるくらいの温度です。
この日のランチ兼夕食は、生ハム、白カビチーズ、インゲン豆のペースト、スモークサーモン、ビーツです。
全部冷たいものばかり!?とお気づきの方もいらっしゃるでしょうか?
今日に限らず、そもそも北欧諸国の伝統的な食べ物は冷たいものがほとんどです。
今では豊かな国々ですが、昔は貧しく、薪は貴重なエネルギー資源でした。日本人の感覚だと、寒い日は鍋料理で温まったり、熱いお風呂に入って心身ともに安らぎを感じますね。しかし、寒くて暗い冬が長く続く北欧では、その昔、部屋を暖めるのがやっとだったのです。温かい料理やバスタブで体を温めることはできません。夏の間は、保存食をつくり長い冬に備えます。酢漬け、塩漬け、燻製などが伝統料理となっていくわけです。
フリッチスフースでの一食目を食べ、北欧の伝統食は冷たいものが多いということが腑に落ちるのでした。
ちなみに「明日は、温かいものを食べましょう!」と言って、2日目の夜はラムを薪のオーブンでローストしたものをいただきました。
あっという間に日は落ち、フリッチスフースはすっかり闇に包まれました。
娯楽のない夜は大いに語らい、私たちはよりお互いを知り、理解しあうことができました。昔の家族団らんもきっとこんな感じで、信頼関係や絆を強くしていったことでしょう。こうして、長く暗く寒い冬をみんなで協力して乗り越えてきたということが、現在の福祉大国形成の礎になったと、身を持って感じる滞在となりました。
次号「冬のサマーハウスその2」につづく
『デンマークのクリスマス』ドロッペさんのハーデソーブラー
2015年12月15日 category:北欧コラム
こんにちは。ティンドラ・ドロッペです。 今回の北欧コラムvol.3は、デンマークで過ごしたクリスマスのお話です。
1年が早々と過ぎていき、あぁまたこの季節が巡ってきたと、思わず空を仰いでしまいます。 そう、この季節のデンマークの空は、来る日も来る日もどんよりと鉛色。私はこの空を今にも泣き出しそうな「なきなきの空」と名づけていました。 北欧の冬は、寒さの厳しさもさることながら、日照時間が大変短いです。毎日がなきなきの空がゆえ、夜がいつ明けたのかわからないまま午後になり、15時くらいになるともう夕暮れ。太陽はなかなかお目にかかれません。
気持ちも沈みがちな寒くて暗い冬。そんな時期だからこそ、アドベントに入ると、誰もがわくわくしながらクリスマスの準備を始め、12月24日のクリスマス・イヴを待ちわびます。
アドベントリースに立てられたキャンドルも4本目に灯りがともり、ついに12月24日、クリスマス・イヴの日を迎えました。
みんな朝から、どことなくそわそわ、はじけるような笑顔で準備をしています。
お昼を過ぎると街から人が消え、モスリムの商店を除いてほとんどの店はクローズ。交通機関もすべてストップします。
まるで夢の中にいるかのように、街の機能も人の動きも停止し、静まりかえるのです。
ここが一国の首都であることが信じられない静けさに驚きを隠せません。そんな私に、友人はこう言いました。
「クリスマスは特別なんだよ。誰にでもどんな人にも平等にクリスマスは訪れる。家族のいない人には声をかけて家に招いたり、寂しい人はバーに行く。貧しい人には迎えてくれる場所がある。ひとりぼっちでクリスマスを迎える人はいないよ。クリスマスは本当に何もかもが特別なんだ。」
その言葉で、「祝福と慈愛に満ちた一日」それが本当のクリスマスなのだと、あらためて実感しました。
さてさて、とはいえ夜は各家庭で賑やかですよ。
まず、デンマークの伝統的なクリスマス料理をご紹介しましょう。
私が親しくしているこの家族は、「ノーギフト!ノーストレス!」と言って、クリスマスプレゼントの交換をしないのがお約束なのだそう。
お金もかかるし、毎年誰に何を~を考えるかでこの時期、クリスマスギフトノイローゼのようになる人も、結構いるといいます。
遠慮のない仲で、よく食べよく飲み、よくしゃべる!くつろいで楽しみ、そして1年の出来事をみんなで分かち合う、それがなによりの幸せなのです。
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食べて飲んで、リセラマンのデザートを楽しんだ後は、みんなでクリスマスツリーを囲み、手をつないで歌を歌いながらぐるぐる回り踊ります。「・・・?あれ?この先なんだっけ?」と全員が歌詞を忘れていたり、回るスピードを早くしたりと、大盛り上がり。「ちなみに、このファミリーには小さい子どもがいないから、普段は踊らないんだけど、今年はキミのために特別見せてあげてるんだからね。」などど言いながら大人だけでもはしゃいでいます。
窓辺に飾られた代々伝わるニッセのお人形とツリーのオーナメント。
亡くなった家族から受け継いだものも含め、この日ここに集う家族。こんなに長い時間、話題がつきることなく家族で会話を楽しむことは、日本では少なくなったと思います。形式的なプレゼント交換、豪華なクリスマスディナー、そんな形あるものだけを幸せと呼ぶのなら、それはすぐに消えてなくなってしまうでしょう。
お金では買えない絆や互いへの思いやりを確認できることが、最大のクリスマスギフトなのだと、この家族に教えてもらいました。
みなさんのクリスマスが、誰かと何かを分かち合う心温まるクリスマスとなりますように。
God Jul og Godt Nytår
ティンドラ・ドロッペ
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デンマークのクリスマスをイラストとともに綴った
北欧コラム・ドロッペさんの著作本
「北欧やすらぎ散歩~スケッチで旅するデンマーク~」はこちら
投稿『デンマークのクリスマス』ドロッペさんのハーデソーブラーは三井住友海上海外旅行保険 の最初に登場しました。
『アドベントのお話』ドロッペさんのハーデソーブラー
2015年11月13日 category:北欧コラム
こんにちは!ティンドラ・ドロッペです。
ずいぶん夕暮れが早くなり、寒くなってきましたね。さて、北欧コラムeps2はアドベントのお話です。
『アドベント(降臨節)』とは、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことで、11月30日に一番近い日曜日に始まり、12月24日のクリスマスイブまでの約4週間をさします。つまり2015年は11月29日~で、この期間は、誰もがクリスマスに近づくのを指折り数えながら心待ちにしています。
アドベントの始まりには、モミや杉の葉を輪にしたアドベントリースを用意し、4本のキャンドルを立てて、4回の日曜日ごとに1本ずつ火を灯していきます。今年は11月29日に1本目を灯し、12月20日に4本のキャンドル全部が灯るというわけです。
他にも1日毎に火を灯す縦長タイプのキャンドルがあります。こちらは、火を灯しておしゃべりに夢中になってしまうと、うっかり2~3日分燃えちゃったよ~ってことになって笑いながら大慌て!「縁起がわるい!わるい!!」と言って火を消すところを見ると、風習ってどこの国も同じように楽しみに大事にされているものだなと微笑ましく、温かい気持ちになります。
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クリスマスリースに4本のキャンドルを立てて、 日曜日毎に火を灯すアドベントキャンドル。 写真はデンマークで。2週目の日曜日ですね。 |
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こちらは、アドベントの日数が12月24日まで 1日ずつカウントダウン式に火灯すタイプ。 デンマークでもみかんをよく食べます。 |
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お隣スウェーデンでは、どの家庭でも窓辺に 階段式のアドベントキャンドルが置かれています。 下の段から左右、日曜日毎に点灯。最後の日曜日に 真ん中に灯します。 |
クリスマスツリーに飾り付けをするのもアドベントに入ってからです。街のあちらこちらにモミの木売りが出て、小ぶりのものから、どこに置くのだろうというくらい大きなものまで、街の一角に小さな森が出来たかのような豊富な品揃え。フレッシュな森林の匂いが漂っていて、思わず深呼吸してしまうほどです。
買ったモミの木を車の屋根に乗せて運ぶ人、自転車につないで走る人、仕事帰りのお父さんが抱えてという光景をよく目にします。
早く買うとモミの葉が落ちて散らかるし、クリスマスの頃にスカスカになるのを嫌って、クリスマス1週間前~3日前くらいに買う人が多いようです。
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photograph©tindra droppe
街のあちらこちらでクリスマスツリー売りがでます。景観をそこねない場所に市が立つって、さすがの美意識です。
クリスマスのおもてなし準備もこの頃から始めます。「グルッグ」と呼ばれる甘いスパイスワインや、オレンジピール、ナッツ、様々なスパイスが入ったクッキーを焼いて、いつ誰が訪ねてきてもふるまわれます。ジンジャークッキーは有名ですね。
オレンジにクローブ(丁子)を模様のように刺して飾ると、部屋中がクリスマスの香りでいっぱいになります。これは「オレンジポマンダー」といって、リボンなどを巻いて乾燥させ、クリスマスツリーのオーナメントとしてあらかじめ作っておくこともあります。オレンジ&クローブの香りは、こすると匂うグリーティングカードや切手などにも使われていて、まさにクリスマスの香り!
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photograph©tindra droppe
ツリーのオーナメントは、オレンジポマンダーの他にも、紅白2枚の紙を組み合わせたハート型のものや、円錐形で中にキャンディーやお菓子を入れられるものを手作りしたり、代々家に伝わるアンティークなものまで、各家庭それぞれに「これじゃなきゃ!」とこだわりがあったり。
クリスマスマーケットではオーナメント売り場は、カラフルで賑やかさと華やかさを添え、人気があります。
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![]() photograph©tindra droppe |
クリスマスツリーだけでなく、リースなどもたくさん市に並びます。日本の暮れに注連飾りを売っているのと似ています。右の写真は、アンティークものばかりのクリスマスマーケットで。味わいのある古いオーナメントは素敵です。
アドベントに入ると、とたんにこのオレンジやスパイスの香りやモミの木の香り、お母さんがクッキーを焼く香りなどなど、色々な匂いがクリスマスが近づく気分を盛り上げていきます。きっとこれらの香りは、高揚感と共に安心もできて、心地よくみんなを元気にするのだと思います。
フレッシュなモミの木のツリーを買うのは大変だけど、オレンジにクローブを刺して、今年は北欧のクリスマスの香りを楽しんではいかがでしょうか?
次回は、いよいよクリスマスのお話です。デンマークでは、クリスマスをどのように過ごし、どんなものを食べるのでしょうか!?
どうぞお楽しみに!!
投稿『アドベントのお話』ドロッペさんのハーデソーブラーは三井住友海上海外旅行保険 の最初に登場しました。
ドロッペさんの『ハーデソーブラ』eps1
2015年10月07日 category:北欧コラム今月から、イラストレーターのティンドラ・ドロッペさんに北欧の文化や習慣、そこに暮らす人々のマインドなどをお話いただきます。題して「ドロッペさんのハーデソーブラー」。毎月連載でお届けします!
★「ティンドラ・ドロッペ」さん。変わったお名前ですが、これは何語でしょうか?ペンネームの由来があればお話ください。
はじめまして、ティンドラ・ドロッペです。
私は2003年~2009年の6年間、福岡で北欧をテーマにしたカフェをしていたんですが、カフェには現地で買い付けた雑貨も販売していたんですね。
2007年5月のこと。ある方の紹介で、スウェーデンで買い付けの合間に小学校を訪問することになったんです。イェーテボリ郊外の「レーヴランダスコーラン」という小学校の当時4年生のホームルームにお邪魔する機会をいただきました。私は自己紹介の中で自分の名前を元に漢字の説明をしました。音読みと訓読みがあって、漢字ひとつずつに意味があること。そして私の名前の漢字の意味からイメージするスウェーデン語の名前をみんなで考えることになりました。名前をつけるとなると、それまでおとなしかった子ども達が、目を輝かせ、いきいきとアイディアを出し合ってくれました。
で~、最終的に全員一致で決定した名前が「Tindra Droppe ティンドラ・ドロッペ」です。
tindraは、スウェーデン語でキラキラと輝くという意味
droppeは、しずく。英語でいうdropですね。
すごくすてきな名前を授けてもらって、ものすごく嬉しかったことと、みんなの目がキラキラ輝いていたことが印象的で今でも忘れられません。のびのびとイマジネーションの豊かな子たちでしたね。
名づけてもらってから、さっそく私の活動の中でペンネームとして使うことにしました。
当時の様子を写真でご紹介します。
ホワイトボードを見ながら、みんな真剣に考えています。
だんだん盛り上がってきました。
「Tindra droppe」に決定!みんな~ありがとう。
初めて見る日本のお菓子に夢中。
個別の机ではなくて、何人か共用の机にマイファイルを立てて自分のスペースを作っているようです。
サングラスで通学!?と思いましたが・・・絵はカラフルでかわいいですね~。
★連載タイトルの「ハーデソーブラー」ってどういう意味ですか?
Ha det så bra!(ハーデ ソーブラ) よい1日を!っていう意味です。
海外に行ったときは、現地の言葉で「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」に加えて、別れ際に「よい1日を!」って添えるようにしています。スウェーデンで「ハーデソーブラー!」って言うと、みんなくすっと笑ってくれるんですよ。発音がおかしいのか、スウェーデン語しゃべれないのになぜそこだけ知ってる?みたいなことで笑われているんでしょうけど。へんてこなスウェーデン語でも言われたら嬉しい!?
日本人同士で「よい1日を!」と声を掛け合うことは、あまりなじみがありませんが、「ハーデソーブラー」の記事を読んでいただいてほっこりするような、微笑ましいような内容だったらいいなと願いをこめまして。
手描きのイラストや写真を交えておおくりしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
★ドロッペさん、楽しみにしています。
どうぞよろしくおねがいします!
投稿ドロッペさんの『ハーデソーブラ』eps1は三井住友海上海外旅行保険 の最初に登場しました。