意外と知らない「遺言」の話。
2014年11月12日 category:お知らせ「遺言」とは
「遺言」とは、一般的に「死の際に残す言葉」という意味で使われています。しかし、法律上の「遺言」とは、「自己の死とともに法的効力(身分上・財産上) を発生させる目的で一定の方式に従って行う意思表示」を言います。また、法律上の遺言としての効力が認められるのは以下の事項に限られています。従って、遺訓や心情、希望を綴った遺書に法的拘束力はありません。
【遺言によってのみ可能な事項】
◆相続分の指定、指定の委託
◆遺産分割方法の指定、指定の委託、遺産分割の禁止
◆共同相続人間の担保責任の指定
◆遺贈の減殺方法の指定
◆未成年後見人、未成年後見監督人の指定
◆遺言執行者の指定、指定の委託
【遺言又は生前に可能な事項】
◆特別受益の持戻しの免除
◆祭祀承継者の指定
◆遺贈
◆寄付行為
◆信託の設定
◆生命保険受取人の指定、変更
◆認知
◆相続人の廃除、廃除の取消
「遺言」の性質
遺言は、本人の最終意思を死後に確保する性質上、以下のような特徴があります。
【1】 要式行為・・・遺言は、民法で定められた方式に従って作成しなければなりません。民法の規定に反した遺言は無効です。
【2】 単独行為・・・遺言は、受遺者や関係者の承諾・同意の有無に関係なく、遺言者の意思に従って、効力が発生します。
【3】 本人行為・・・遺言は、本人が作成しなければならず、代理は許されません。 また、遺言は2人以上の者が同一の証書をもって共同で遺言することは禁止されています。
「遺言能力」
遺言は15歳に達すれば、親の同意がなくても単独で行うことができます。反対に14歳以下の者は親の同意があっても遺言することはできません。また、成年被後見人は、医者2人以上の立会いの下、事理を弁識する能力を一時回復したときに限り遺言することができます(民973Ⅱ)。
「遺言」の効力
原則として遺言者の死亡時から効力を生じます。しかし、遺言に停止条件が付され、死亡後に条件が成就した場合は、条件成就時から効力を生じます。なお、受遺者が先に死亡した場合は効力を生じません。また、未成年後見人や成年後見人がいる場合、後見人やその妻子に有利な遺言を作成することはできません。ただし、後見人が直系血族、配偶者、兄弟姉妹の場合は作成することができます。
<根拠条文>
民法975、961、973、985、994、966
<参考文献>
【1】 親族法相続法講義案 /裁判所書記官研修所慣習 (司法協会)
【2】 ケース別遺言書作成マニュアル/公証人小倉顕・篠田省二・渡邊剛男・岡崎彰夫共編 (新日本法規)