2026.9月号 編集部だより【扉の向こうを知らない旅】
2026年08月25日 category:編集部だよりみなさまこんにちは。
今回、「世界の市場」をテーマに記事を書きながら、昔の旅の写真を探してみました。
出てきたのは、2005年に訪れたストックホルムとヘルシンキの市場の写真。もう20年以上前のことです。
ストックホルムの街を歩いていた時、赤レンガの立派な建物が目に入りました。当時は今のようにスマートフォンで何でもすぐに調べられる時代ではありません。ガイドブックや地図を持って歩いていた頃。その時持っていたガイドブックには情報はなく、私はその建物が市場であることさえ知りませんでした。

「ここは何だろう? 入ってもいいのかな?」
そんな好奇心だけで扉を開けてみると、その向こうにはストックホルムの台所が広がっていました。
見たことのないお菓子、ずらりと並ぶエビのお惣菜、野菜やチーズ、そして、日本ではなかなか目にすることのない姿で売られている肉類。どこを見ても知らないものばかりで、私にはキラキラした未知の世界に見えました。
魚屋さんでは、店のおじさんに声をかけて写真を撮らせてもらいました。すると「中に入っておいで」と売り場の中へ招いてくれました。
拙い英語で一生懸命、なぜここにいるのかを伝えようとしたことを覚えています。
「日本の福岡というところから来たんです。」
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なぜおじさんが、通りすがりの旅行者だった私にそこまで親切にしてくれたのか。当時、日本から来た観光客が珍しかったのか、それとも私が好奇心いっぱいの顔をしていたのか。それは今となっては、おじさんにしかわかりません。おじさんと一緒に満面の笑顔で、記念撮影を撮らせていただき、帰りには、お店のトートバッグまでいただきました。20年以上経った今でも、あの日のことをよく覚えています。

今は、旅先でもスマートフォンがあれば、目的地まで迷わず行けます。営業時間も口コミも、店内の様子さえ、行く前に知ることができます。便利になり、限られた旅の時間を効率よく使えるようになりました。
スマホはなかったあの日の私は、扉の向こうを知らないまま市場に入りました。
「お!?」「ん!?」と、私の嗅覚が反応したら、見過ごさず、「何だろう?」と立ち止まり、ちょっと触れてみる。そして、自分の目で見て驚き、そこにいた人に話しかけてみる。思いがけないことって、ちょっと脇道に入ったような感覚で、私はワクワク感が高まります。目的としたメインのイベントではないけれど、感動の対象が小さくても、感動の振れ幅が大きいことが起こり、体感の密度が濃くなる気がするのです。
便利なものの力を借りながらも、ときにはスマートフォンが教えてくれる情報より先に、自分の中の小さな反応に耳を澄ませてみる。
直感を頼りに、空気の匂いを嗅いで、目で見て、触れて、言葉にする。それが感情に残る体験となり、喜びとして記憶されるのではないでしょうか。
自分の中から湧いてくる好奇心は、旅先では案外頼りになるナビゲーションなのかもしれません。違ったら戻ればいいし、扉が閉じていたら無理にこじ開ける必要もありません。でも、心がほんの少し反応したなら、見過ごさずに一歩だけ近づいてみる。その扉の向こうに、20年経っても忘れない景色が待っていることもあるのです。
みなさんも、ご自分のアンテナ、嗅覚を信じてみてくださいね。
それではまた来月〜
(編集部anan)
投稿2026.9月号 編集部だより【扉の向こうを知らない旅】は三井住友海上 海外旅行保険の最初に登場しました。


