Peterskirche – Vienna, Austria / Ethan Prater
オルガンコンサートを待つ僕の隣で
君はザッハーとデーメルの話をする。
巨匠が手がけたバロック装飾に囲まれて
僕がロットマイヤーの天井画に夢中なとき
君は甘いトルテに思いを馳せる。
僕はどうしようもない溜息を
努めて爽やかな笑顔に紛らす。
そうだ。これがふたり旅だ。
オーストリア共和国の首都、ウィーン。
ウィーンは、華麗という言葉が似合う街である。そしてその理由を、ハプスブルク家を抜きにして語ることはできない。なぜなら、約650年に渡ってこの地に君臨したハプスブルク家が美しいと感じ、こよなく愛したものでウィーンという街が出来ているからだ。
ハプスブルク家の夏の離宮「シェーンブルン宮殿」をご存知だろうか。黄色の外壁が眩しい宮殿である。これは「テレジアン・イエロー」と呼ばれ、国母と慕われる女帝マリア・テレジアの好きな色に塗装されたものだという。ちなみにこの宮殿は、6歳のモーツァルトが7歳のマリー・アントワネットに求婚したという有名なエピソードの舞台でもある。
もちろん、ハプスブルク家の遺したものは建造物だけではない。名だたる芸術家を育て、都と称されるまでに音楽を発展させた功績も、麗しき遺産である。
モーツァルト、ベートーベン、シューベルト、シュトラウス、ハイドン、マーラーなどの音楽家が、ウィーンの空を見上げて美しい旋律を口ずさんだ背景には、それを求め、援助したハプスブルク家の存在がある。味覚についても同様で、もしもハプスブルク家が甘味を愛する一族でなかったら、これほどまでにウィーンの菓子店に豊富なスイーツが並ぶことはなかっただろう。
戦いではなく、結ばれることによって発展させることを家訓としたハプスブルク家。ウィーンに流れるどこか穏やかな空気は、こんなところに通じているのかもしれない。
カフェ・コンディトライの誘惑
2014年03月12日 category:ウィーン特集「カフェ・コンディトライ」というものをご存知だろうか。これはウィーンを訪れたら誰もが一度は目にする「喫茶店+菓子店」のことである。厳密にいうと、単なるカフェではない。
カフェ・コンディトライには、菓子に並々ならぬこだわりがある。名物「ザッハ・トルテ」はもとより、柔らかいクリームを挟んだ「クリームシュニッテ」やシューにチーズと生クリームが入った「トプフェンゴラチェ」など、ウィーンを代表する数々のスイーツが、カフェごとに独自性を主張しながら提供されている。中には名店「ザッハー」と「デーメル」のように、「ザッハートルテ」という名称のオリジナル権を巡って、裁判にまでなった例もある。
写真は、カフェ・コンディトライの中でも老舗中の老舗といわれる「ゲルストナー」(1847年創業)。この店のこだわりも、やはりザッハ・トルテである。「ゲルストナー・トルテ」と呼ばれるそれは、極端な甘味を嫌う日本人の繊細さに合う、上品な味わいが特長である。
菓子店だけではない。音楽ホールや書店など、カフェ文化の薫るウィーンにおいては「お茶をすること」が暮らしのあらゆる場面に同居している。人々が集い、論じ、同じ時を憩うことを「誘う街」なのである。
だから、ウィーンの街を知るには、先ずカフェなのだ。カフェの中に街があるといわれるくらい、この街はそのチャンスに溢れている。減量中の身でも、森に迷い込む気分でコンディトライの扉を開けてみよう。それが、ウィーンを旅するということである。
ウィーンの楽しみ方!
2014年03月12日 category:ウィーン特集シュトラウス&モーツァルトコンサート
ウィーンといえば、音楽の都。クラシックに縁遠くても、世界最高峰の『ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』の名はご存知の方が多いのではないでしょうか。今回綾小路さんが訪れたのは、その本拠地である『楽友協会』。ウィーン芸術週間音楽祭なども催される由緒あるホールです。
楽友協会ホール
ウィーン・フィルの定期公演は会員の年間予約席で埋まっていますが、定期公演以外ならチケットの購入も可能です。夏季には観光客が楽しめるようなプログラムも用意されています。綾小路さんが聴いたのは『シュトラウス&モーツァルトコンサート』。これは同行したお姉様たってのご希望だったそう。さぞかし優雅なひとときをお過ごしだろうと思いきや・・・綾小路さんのご感想は「長くて辛かった・・・」。
ウィーンの標識
そんな綾小路さん。断然、街歩きの方が性に合っているようで、こんなワンショットもお寄せくださいました。標識マニアにはたまらない、ウィーンならではの逸品です。表示の意味は『犬に口輪とリードをしてください』。なんでも、ウィーンの街中では犬に口輪をさせなければならないという条例ができたそう。これには『犬には健康状態に応じた運動をさせ、社会との関わりを持たせながら飼育すべきだ』という動物保護の観点があるようです。世界の中でも犬を飼いやすい街として知られるウィーン。綾小路さんも街で可愛い犬を沢山見かけたそうです。
ナッシュマルクト
街歩きで外せないのがマーケット巡りです。海外では地元スーパーに立ち寄るのを楽しみにしているという綾小路さん。写真はウィーン最古の食品市場『ナッシュマルクト』の八百屋さんです。『ナッシュ』とは『食道楽』の意味。ワインの量り売りをはじめ、スパイスやドライフルーツなども豊富に揃うので、お土産選びにもぴったりの市場です。
一流の音楽から庶民の台所まで、盛りだくさんの街ウィーン。さて、あなたはどうやって楽しみますか?